「話のわかる工務店」がわかる話

お客さまとの話。職人との話。取引先との話。地域の話。お金の話。家づくりの参考になればと思い、「話のわかる工務店」がこれまで語って来なかった話をご紹介します。これで脇坂工務店のことを少しでも知っていただければ幸いです。

脇坂肇

2021年3月19日 更新

#23

銭函がキテる。

脇坂肇

最近銭函では、
“新しい流れ”を肌で感じています。
大手ハウスメーカーがこの地に進出してきて、
いくつもの家が続々と建ち始めているんです。
まさに建設ラッシュ。
おかげで、一昔前と比べると
土地が見つかりづらい状況に…。
何度もここで書いている通り、
この街で当社はコツコツやってきたんですけど、
このままでは大手にやられてしまう…
資本主義って残酷…
…ということは全然なくてですね。
他社が家を建てることで、
銭函の良さを知ってくれる人が
一人でも増えるわけですから
ウェルカムですよ…。
ははっ…。
え、私の声と足が震えてるって…?

そもそもなぜ大手ハウスメーカーが
ローカルの小さな街、銭函へ進出してきているのか。
私なりの市場分析をお話しましょう。

不動産業界と普段接点がない人からすれば、
ピンと来ないかもしれないですが、
ここ5年くらいで投資物件への熱が高まっています。
マンションとかアパートを購入し、
賃貸物件として貸し出して家賃収入を得る、
っていうものですね。
で、これが過熱して何が起きたか。
札幌市内で地下鉄沿線の地価が上昇したんです。
マンション用に土地が次々と買われていったから。
そしてドミノ倒しのように、その影響が広がっていって、
結果市内全域の地価が上がっていきました。

一方、一軒家を建てたい人たちはどうなのか。
一般的なサラリーマンの方が
戸建て住宅を手に入れようと思った時、
一昔前なら銀行などから借り入れる金額は
3000〜3500万円くらいで、
25年〜30年のローンを組んでいました。
その借入金額のうち1500万円以内が
土地にかけるお金といったところでした。

でも最近の相場は
4000〜4500万円というのが私の実感値。
土地にかけるお金は、
2000万円くらいが当たり前になっています。
2019年には「40年ローン」なんてものが登場。
ひと月あたりの返済額が抑えられるので、
借入総額が増えていく要因となったようです。

とは言え、
家を建てる費用が上がってきている
流れがありつつも、
「そこまで借りるのはちょっと…」
という人たちも一定数います。
そういう人たちは街中を敬遠して
郊外に土地を求めていくことになります。
たとえば江別市大麻とかですね。
(統計上も人口が増えているそうです)

この「札幌郊外で土地を探す」という選択肢の一つに
銭函がなってきたというわけです。
正確には、大手ハウスメーカーが
比較的手が届きやすい銭函の土地に
目をつけたということですね。

家に対する価値観の変化も感じています。
かつて一戸建てを建てることは
「自分の城を持つ」くらいの
大きな意味合いを持っていました。
「夢のマイホーム」とか「終の棲家」
なんて言葉もありましたよね。
それが今や一生同じ家に住み続る人は少数派。
なんというか
「季節にあわせて服を着替える」くらいの
軽やかな感じで住まいを変える人が増えています。
「いつかは引っ越す前提で、
そこまでお金をかけずに家を建てたい」
というニーズが一定数あって、
銭函のようなローカルがハマったということです。

ふぅ…。
3年ぶりくらいにプロぽい話をしてしまいました。
「あれ、何か別の記事に迷い込んだ?」
と混乱させていないでしょうか。
あ、ネットから
コピペとかしてないからご安心ください。
もう疲れたので、
今回はこのくらいでいいですかね…。

じゃあ、この銭函において、
大手メーカーと脇坂工務店はどう勝負するのか?
ひとつは銭函でのネットワークです。
うちは工務店であると同時に不動産屋でもあります。
宅地建物取引業の免許を持っていますから、
土地の仲介も買取・販売もできるんです。

で、「銭函=脇坂工務店」のイメージが
業界内で定着してきたせいか、
「銭函の土地なんだけど、
うちの会社詳しくないから、
脇坂さんのところで面倒みてくれない?」
といった相談が
色んな不動産屋さんから持ち込まれています。
なので、独自ルートで見つけた土地を、
お客さまに提供できるんですね。

最近のケースだと、
銭函2丁目の3区画の土地取引を手がけました。
もともとは、ある法人が持っていた広い土地。
知り合いの不動産屋からの相談を受けて、
当社がまず買い取ったんです。
ただ、そのままだと個人で購入するには広すぎるので、
3分割して建築条件付きで売り出しました。

もう一つは銭函1丁目。
ここは仲介として関わったのですが、
5区画すべて成約、完売!
ちなみに仲介先はすべてハウスメーカーや工務店でした。
「1区画くらい、脇坂工務店で建てたい人いるかな」
と思っていたら、まさかのゼロ…。
うちもまだまだってことですね…。

こういった買取販売や仲介を行う一方で、
私たちは銭函に3軒の賃貸マンションやアパートを
建てて保有しています。
(正確には持っているのは当社の関連会社です)
すべてファミリー向けの物件。
なぜかと言うと
「お試し移住」をしてもらいたいからです。
よく知らない土地にいきなり移住するって
ギャンブルに近いと思っていて。
そこが肌に合う場合もあれば、
そうじゃない場合もある。
だから、賃貸物件にまず住んでみて
「お試し」してみるのが良いだろうと考え、
賃貸物件を銭函に建てていったんです。
これは大手がやっていないことでしょう。
実際、銭函の賃貸物件の稼働率は好調です。

ここでちょっと話が脱線しますが、豆知識を。
賃貸マンションって、
大家さんからすれば単身者用物件のほうが
効率良いんですよね。
たとえば60平方メートルの広さの2DKを
月額家賃7万円で設定するより、
30平方メートルの単身者向けの部屋を
月額家賃5万円で設定した方が
部屋数を多く取れますよね。
つまり、お金儲けだけ考えたら
単身者用のマンション作ったほうがいいんです。
つまり、何が言いたいかというと、
わざわざファミリー向けの物件だけを建てている
私は儲かっていないってことですね…!
また好感度が上がってしまうな…。

プロっぽい話からの宣伝みたいになっていますが、
現在好感度上げたいキャンペーン中なので…。

たまにはチヤホヤされたい。

とにもかくにも、
銭函は盛り上がってきております。
2020年には2度、朝日新聞と北海道新聞で
銭函の活況について特集記事が掲載されました。
小樽市の統計によると、
2020年1月〜10月の期間で80人の転入超過。
つまり銭函は人が増えています。
対して、年々人口減少傾向にあるのが
銭函が属する小樽市です。

昨年とあるイベントでたまたま小樽市長を見かけて、
名刺交換をかねてご挨拶しました。
すると開口一番、
「あなたが脇坂さんですか!」
と言われて、
「何か悪事がバレたかな…」
と一瞬ビクッとしました。
(や、悪いことはしてないです)
どうやら
「銭函には脇坂というのがいて、
昨今の活況に一役買っているらしい」
という噂が市長の耳に入っていたそうなんです。
「きっと小樽への移住者を増やすヒントを
お持ちですよね!
今度うちの移住担当者を銭函に行かせますから!」
と言われて早数ヶ月。
担当者、来ないな…。
会社の電話線外れてないかな。

また、小樽商工会議所で
移住にまつわる業務の担当者さんが、
話を聞きたいと来社されたこともあります。
私は1時間半、熱弁をふるいましたよ。
自分の知っている知識やノウハウなど
すべてオープンにしつつ、
小樽はこうしたらいいんじゃないかという
アドバイスを含めての濃密な1時間半。
ギャラはお菓子でしたけど。
いや、根に持っているとかじゃないですよ…。
(お菓子はスタッフで美味しく頂きました)

あ、そんなお菓子のことはどうでもよくて、
その担当者と話していて気づいたことがあるんです。
銭函から見れば私は「よそもの」なんです。
もともと札幌からやってきている人間ですから。
だからこそ客観的な視点から
街の良さに気付けるんじゃないかと。
なので、
「よそから来た人を活用して、
小樽市への移住促進プランを考えた方がいいですよ」
と僭越ながら進言させていただきました。
もちろん自分のことを指さしながら。
しかし、いまだに
「小樽移住促進アドバイザー就任のお願い」
みたいなオファーが来ないのはなぜでしょうか。
知らぬ間に
「アドバイスのギャラはお菓子か…」
という心の中の声が、
口をついて出ていたのだろうか…。
あ、ギャラはお菓子よりも、
シングルモルトウイスキーとかが良いです。
混ぜてないやつ。

ただ、不思議だと思ったのは、
別に自分は銭函へ移住してもらおう、
と思って仕事をしてきたわけではないのです。
にも関わらず、今や移住のアドバイスを
求めてくる人までいる。
今の銭函に少しでも
私が役立てていることがあるとしたら、
日々の「実務」だと思うんです。
つまり、銭函に住みたい人のために土地を探したり、
放置されていた土地の複雑な権利関係を整理して、
普通の人が買える状態にしたり。
この街の地主さんの相談に乗ったり。
いわゆる工務店や不動産屋としての実務です。
それを積み重ねてきたという自負はありますから。
あとは何より私自身が
銭函のファンであることはとっても大きい。
この良さをみんなに知ってほしいっていう
くらいのファンですからね。
そのあたりが相まって、
ちょっとだけ銭函のお役に立てているのかもしれません。

小樽の移住促進のために、
一つ具体的なアドバイスを出すとしたら
銭函と同様にまずはファミリー向けの
賃貸物件を増やすべきですね。
その建設費用に助成金を出すとか、です。
前述の通り、
いきなり移住するのはハードル高いので、
それを少しでも下げるためにも。

地方の移住促進に関して、
「住まい」の観点が抜けていると
感じることが多々あります。
もちろん、移住してもらいたい市町村が
「格安で住める住宅を用意しました!」
とアピールしているのは良く目にします。
が、
「それ、ホントに若い夫婦が住みたい物件?」
っていうケースが多いですから。
インスタ映えとか気にする若い女性とかが、
汲み取り式のボッ●ン便所の家に
住みたがらないでしょう。
いや、意外と
「こんなトイレ、見たことなーい!
逆に映える〜!逆に〜」
って言うのかな…いや言わないか。
余談はともかく、
「ファンを増やす」っていう気持ちで考えると
いいんじゃないですかねぇ。
そう考えれば、良い住まいを用意するって
自然な成り行きじゃないでしょうか。

今回は柄になく真面目な話をしすぎました。
そうそう、ひとつ報告させてください。
チヤホヤされたいって言っていたら、
なんとファンメールが来ました。
しかも道外から。
たまたま当社のWEBを見つけて、
この「わかる話」で
すっかりファンになったとか。
とうとう、私の名声も津軽海峡を越えたか…。
そして、その先にはあの大陸があるんですよね。
「情熱●陸」という名の大陸が…。
とうとうテレビ出演も間近か…。

ただ、メールをよく読むと文末に
「ぜひお取り引きさせていただきたく」
って書いているな。

あれ、これひょっとして営業メール…?

脇坂肇